近年の建築物外装においては、単に下地を保護するだけでなく、意匠性や高級感を兼ね備えた仕上げが求められるようになっています。その代表的な工法が「多彩仕上げ塗装」です。多彩仕上げとは、複数色のチップや粒子を含んだ塗材を用いることで、自然石調や御影石調、立体感のある模様を表現できる塗装方法を指します。従来の単一色仕上げに比べ、デザイン性に優れ、建物の外観価値を高められることから、住宅や商業施設、公共建築など幅広く採用されています。
① 意匠性
石材調・タイル調などの重厚感ある表情を再現できるため、外壁材を貼り替えることなく高級感を演出可能です。
② 耐候性・耐久性
多層仕上げにより塗膜が厚くなり、紫外線や雨水から下地を保護する性能が向上します。
③ 汚れにくさ
上塗りにクリヤー塗装を施すことで、親水性や低汚染性を付与でき、長期にわたり美観を保持します。
④ 改修性
サイディングの模様や目地を活かしつつ施工可能なため、既存外壁の意匠を損なわずに改修できる点も利点です。
多彩仕上げは製品やメーカーによって多少異なりますが、一般的な工程は以下の通りです。
下地処理
高圧洗浄、クラック補修、ケレン作業などを行い、塗装面を健全に整えます。下地処理の良否が仕上がりを大きく左右します。
下塗り(プライマー)
既存下地に合わせて専用の下塗材を塗布します。下地との付着力を高め、上塗りとの密着を確保する重要な工程です。
ベースコート
意匠塗材の下地色を均一に整えるために、中塗りとしてベースカラーを塗装します。デザイン性を高めるために白や黒など、チップの発色を際立たせる色を選ぶことが多いです。
多彩模様塗り
特殊スプレーガンやローラーで、複数色を含んだ塗材を吹き付けます。石材調・砂目調・フレーク調など、用途に応じて表情を作り出す工程です。
トップコート(クリヤー仕上げ)
耐候性や防汚性を高めるため、透明なトップコートを塗布します。光沢あり・なしを選択でき、仕上がりの質感を調整可能です。
多彩仕上げは特にサイディング外壁の改修に効果的ですが、モルタルやコンクリート面にも施工可能です。ただし、以下の点に留意する必要があります。
下地の劣化が激しい場合は、補修や張替えを優先する。
模様の均一性を保つには職人の技量が問われるため、経験豊富な施工者を選定することが重要。
通常の単層仕上げに比べ材料・工期がかかるため、コスト面を考慮した提案が必要。
多彩仕上げ・意匠性塗装は、建物を保護しながらデザイン性を高める優れた工法です。自然石のような高級感、耐久性、美観保持性能を兼ね備えており、外壁リフォームの選択肢として今後さらに需要が高まることが予想されます。単なる塗り替えではなく「建物の表情を刷新する仕上げ」として、設計者・施主双方にとって魅力的な工法と言えるでしょう。