住宅街を歩いていると、ときどき建築中の家がシートで覆われているのを見かけることがあります。そのシート、ただの目隠しや装飾ではありません。「メッシュシート」と呼ばれる、建築現場では欠かせない安全資材の一つです。
メッシュシートは、主に住宅や小規模建築物の足場に取り付けられ、さまざまな役割を果たしています。
1、安全確保(落下物防止)
建設現場では、工具や材料などが高所から落下する可能性があります。こうした事故を防ぐために、メッシュシートが足場の外周を覆うことで、落下物が外に飛び出すのを防ぎます。
2、飛散防止(ホコリや塗料の拡散防止)
工事中には、塗装の飛沫や解体時の粉塵が発生します。メッシュシートは、こうした飛散物が近隣住宅や道路に影響を与えないよう、外部への拡散を抑えます。
3、視線対策(プライバシー保護)
住宅の工事は、時には住民が生活している状態で行われることもあります。また、近隣の視線に配慮する必要もあります。メッシュシートは中の様子が見えにくくなるため、プライバシー確保の点でも有効です。
4、風の影響を抑える(安全性の向上)
足場に直接風が当たると、転倒や破損のリスクが高まります。メッシュ状のシートは風をある程度通すことで、足場全体の安定性を保ちやすくなります。
布のようなシートではなく、あえてメッシュ(網目状)になっているのには理由があります。風通しを確保することで足場の転倒リスクを下げつつ、必要な保護機能を維持することができるのです。完全に密閉してしまうと、強風時に“帆”のようになってしまい、かえって危険になることがあります。
一般的に、メッシュシートはポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂で作られており、軽量でありながら強度があります。また、用途に応じて以下のようなバリエーションもあります
● 防炎メッシュシート:万が一火が近づいても燃え広がりにくい加工が施されたタイプ。
● UVカットタイプ:日差しをある程度遮り、作業者の負担を軽減。
● カラーメッシュ:企業のイメージカラーや現場の美観維持のためにカラー展開されているもの。
最近では、再利用可能な高耐久素材のメッシュシートや、リサイクル素材を使用した製品も登場しています。使い捨てが基本だった従来の建築資材も、サステナブルな方向へと進化しているのです。
普段あまり意識されることのないメッシュシートですが、その裏には現場の安全や近隣への配慮、環境への意識など、実に多くの役割が込められています。次に工事現場の横を通るときは、そんなメッシュシートの“縁の下の力持ち”ぶりにも注目してみてはいかがでしょうか。